トヨタの
リコール。品質、そして安全面でのトヨタ神話が覆されることとなり、米国でのビジネスはおろか全トヨタの屋台骨さえ揺るがしかねない。だが、米国内では、今回のリコール問題については別の面が見え隠れする。
解決すべき技術面の問題の影に、別の要因が隠されているようなのだ。その『見えざる要因』を分析していきたいと思う。
★いかにも、な日付
まず最初の要因として、
米国全体の反トヨタ、反日本の意識があげられる。
アクセルペダル問題での最初の死亡事故は平成二十一年の八月。折しも米国の新車購入支援補助政策の最中であり、この制度を利用しての買い換え需要のほとんどが『小さく故障しない燃費のいい日本車』に集中した。GMの破綻などで苦境に喘ぐ米国の自動車産業には「税金を使って日本車が売れた。なぜ米国の自動車産業を支援しないのか」という不満が出ていた。
昨年、最初にトヨタが
リコールを申し出たのは十一月二十五日。「問題を指摘されそれに対処した」だけのように見えるが、この日付が反トヨタ意識を再燃させたとの指摘もある。
実はこの十一月二十五日というのは、米国では感謝祭の連休直前。この日に
リコールを発表すれば、休日となるため、じっくり読んでもらえる二十六日の朝刊に掲載され、二十七日からのセール期間への影響を食い止められるという判断が働いていたことは、
米国に住んでいれば誰にでもわかることだ。
★トヨタ憎けりゃ日本車憎い
二月に入ってからも
リコール問題は騒ぎがますます大きくなっている。トヨタ自身は生産販売停止にまで陥り、一方 GM は補助金を用意して買い換えキャンペーンを始めた。体面を気にする状況ではなくなってしまったトヨタは、一月三十一日付けの『ニューヨークタイムス』をはじめ主要な新聞各紙に一面を使った状況報告と説明広告を掲載するに至る。
さらには米国販社のレンツ代表による謝罪、そして週が明けた二月二日には本社佐々木真一副社長が「お詫び」する事態になった。これらは
米国政府が
公聴会の開催を指示したり、制裁金を検討するなど、その場を取り繕う対応では問題がもう解決出来ないことを理解した上でのこと。
しかし、先に米国側の社長が謝ったということ、そして社長の謝罪がとにかく遅かったことなど、
米国社会がますます感情的になってしまうような対応が続く。既に「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」となってしまい、
日産の
シカゴモーターショーへの急遽の出展は、飛んでくる火の粉を避けるための策だ。
★GMの破綻が問題を大きくした
欧州、そして日本国内でのそれも含めたトヨタの対応が非常にまずかったのは確かであろうが、問題の発端はGMの破綻にある。今年三月に予定されているGMとの合弁会社 NUMMI からのトヨタの撤退だ。
そもそも NUMMI の行き詰まりは、GMが破綻したことに端を発するもの。トヨタに一方的な非があるわけではない。しかし NUMMI の工場が元々はGMの閉鎖工場であったことで、労働者の多くがGMで働いた経験があったことなどから、その鬱憤がそのままトヨタに対して向けられている側面があるのだ。
GMの破綻が日本車の躍進のためという論調は半ば八つ当たりとも言える。さらに言えば不具合があるとされていたアクセルペダルの生産は、
米国企業によるものだ。またこの部品によるクレームは、全クレーム中、わずかしか該当しない。メディアの姿勢もこのような事実を無視した報道が中心になるなど、反トヨタが主眼であるといわざるを得ない。
事実、ワシントンDCにおけるトヨタの
リコールに対するデモ行進が、そのまま NUMMI からの撤退に反対するデモにすり替わったケースもあった。今や問題が技術面/品質面のはっきりしたものだけではないわけだ。GMが復興するにしても相当の時間を要するだろう。当然トヨタの苦労も当分続くこととなる。
平成二十二年二月十一日(木)一時四十七分
トヨタ リコール、見えざる要因 その一 反トヨタ、反日本の意識